皆さん、『パルサー』という天体をご存知ですか?
聞き慣れないという方も多いのではないのでしょうか。
パルサーは、規則正しい周期で光を放つ独特で不思議な特徴を持つことから宇宙の灯台とも呼ばれています。
宇宙広しと言えども、パルサーほど変わり種の天体はそうは無いでしょう。
そこで今回は、宇宙の灯台『パルサー』について紹介していこうと思います。
パルサーとは
画像:NASA パルサーの想像図
パルサーとは、数ミリ秒から5秒程度の周期で可視光線、電波、X線などのパルス(脈動)を放つ天体の総称です。
パルサーが初めて発見されたのは1967年で、発見者のアントニー・ヒューイッシュとジョスリン・ベルはあまりにも規則的な周期の電波に驚き、地球外生命体が人為的に発信している信号かと思ってしまったそうです。
そのため彼らはこの謎の天体に「Little Green man(緑の小人)」の略である LGM-1 (現 PSR B1919+21) と命名しました。
ちなみに、この発見を評価されヒューイッシュは1974年にノーベル物理学賞を受賞しました。
パルサーの正体
パルサー PSR B0540-69
パルサーは、”星の死”である超新爆発を起こした天体の成れの果てである 中性子星 だと考えられています。
中性子星とは、太陽の8~10倍の質量の恒星が寿命により重力崩壊を起こすことで誕生し高密度の中性子で構成された天体です。
直径は20km程度ですが、質量は太陽と同程度であり密度はなんと 1,000,000,000,000,000 g/cm3 にもなります。
密度の大きさが天文学的で、もはや意味が分かりません(;・∀・)
そして、この常識外れの天体であるパルサーは、現在まで約1600個も確認されています。
もう四方八方からパルスの嵐ということですね(◎_◎)
いやはや(;^ω^) 宇宙のスケールと真実にはいつも驚かさればかりです。
パルス(脈動)のメカニズム
パルサーの最大の特徴である、規則正しい周期のパルスはどのようなメカニズムで発生しているのでしょうか。
その秘密はズバリ「磁極から放たれる高エネルギー電波」「自転軸に対し傾いた磁極」「超高速の自転」にあります。
パルサーの磁極からは高エネルギーの電波が放たれており、この現象はジェットと呼ばれています。
ジェットは宇宙ではありふれた現象で、パルサーに代表される中性子星やブラックホール、誕生したばかりの原始星などの磁極からも発生します。
そしてパルサーの磁極と自転軸は互いに角度がズレているため、磁極の方向が一定ではありません。
磁極が地球の方向を向いているときのみ電波が観測されます。
その上、自転周期が数ミリ秒から数分という驚異の速度で自転しているため、まるでパルサーが規則正しく短い周期で点滅しているように見えるのです。
下の動画を見て頂けると理解しやすいと思います。
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宇宙の灯台としての利用
現在、地球上では地球の周囲に配備された複数のGPS衛星を利用することで自分の正確な位置を知ることができる「全地球測位システム (GPS:Global Positioning System)」が使われています。
ただし、GPSの測位範囲は地球上のみで地球から離れてしまうと利用することはできません。
そこで米国宇宙局NASAが、パルサーをGPS衛星の代わりとした「全銀河系測位システム」の開発に乗り出しました。
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全銀河系測位システム
画像:NASA’s Goddard Space Flight Center 国際宇宙ステーションに設置された望遠鏡「NICER」のイメージ
全銀河系測位システムはGPS衛星の代わりに宇宙に点在する灯台(パルサー)を目印にして、そこから放たれる周期的な電波を観測することで太陽系内はもちろん、パルサーの位置が特定できている銀河系の範囲内ならばどこでも自分の位置を知ることができるシステムです。
パルサーの観測はISS(国際宇宙ステーション)設置された「NICER」という望遠鏡を使用して行います。
そしてNASAは、2018年1月12日に実証実験を行い成功したと発表しました。
この実証実験の成功により、今後の深宇宙探査の際に地球からの操作なしに探査機が自律的に目的地を目指すこともできる可能性が出てきました。
将来的には、誤差数百フィート以内の高精度な全銀河測位システムの実現を予定しています。
それにしてもパルサーを測位システムに利用してしまうとは…(◎_◎;)
やっぱりNASAの科学者の発想はすごいですね。
今後の「全銀河系測位システム」の完成を楽しみにしておきましょう。
画像:NASA NICERに搭載された望遠鏡
まとめ
さてさて、今回は宇宙の灯台『パルサー』に関して紹介して参りましたがどうでしたか?
あまり聞き慣れない上に、未だに謎が多い天体ではありますが今度の観測技術の向上や「全銀河系測位システム」への利用も検討されていることから将来的にはもっと身近で有名になる星かもしれません。
これからも『パルサー』には要注目ですよー(*’▽’)!
ではでは、次回の宇宙情報を乞うご期待!