「ブラックホール」、その名が表す通り宇宙にポツンと存在する底のない”真っ黒の穴”のような天体です。
近づけば、どんなものでも”落ちる”以外の選択肢はなく、光でさえもなすすべなく飲み込まれていきます。
その特性上、観測が非常に困難で未だに多くの謎を秘めた「ブラックホール」について詳しく紹介していこうと思います。
ブラックホールとは?
「ブラックホール(Black holes)」とは、極高密度かつ大質量で、非常に強力な重力場を持つ天体のことです。
ブラックホールの初期概念は、18世紀後半にピエール=シモン・ラプラスが「十分に質量と密度が大きな天体があれば、その重力は光をも捉える」という着想から生まれました。
そして、1915年にカール・シュヴァルツシルトがアインシュタイン方程式を特殊解として導き、「ブラックホールは密度無限大の点”特異点”をもつ天体」という近代ブラックホール理論が誕生しました。
しかし、アルベルト・アインシュタインは”特異点”が存在し得るのは計算上のみで、現実にはあり得ないと考えていたようです。
1970年代になると、X線天文学の発展によりサイズが小さいにも関わらず大質量を有する高密度の天体が観測され始めブラックホールの存在が現実的なものとなりました。
左から、ピエール=シモン・ラプラス、カール・シュヴァルツシルト、アルベルト・アインシュタイン
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重力の特異点
強力な重力により歪められた時空平面
ブラックホールは、極めて高密度な天体で周囲の時空が激しく歪み、重力場が無限大となる場所と定義される「重力の特異点(Gravitational singularity)」を持っている。
一般相対性理論によると、重力は時空の歪みで説明され物体の質量が大きいほど周囲の時空の歪みが大きくなる。
物体は時空に沿って運動するため、質量を持った物体が近くにあると引き寄せられる(落ちる)ように運動します。
これは光ですら例外ではありません。
事象の地平面
ブラックホールの中心である”重力の特異点”から、ある半径より内側では光すらも脱出できない領域があります。
この半径は「シュヴァルツシルト半径 (Schwarzschild radius)」と呼ばれています。
また、シュバルツシルト半径を持つ球面を「事象の地平面(Event horizon)」または「シュヴァルツシルト面」と呼びます。
”重力の特異点”は極小の点であり大きさなどという概念は無いのですが、ブラックホールの大きさを表す際には「シュヴァルツシルト半径」が用いられ「事象の地平面」天体の表面ということになります。
ただし表面とはいっても「事象の地表面」にはぶつかるような物質は無く、物質は特異点に向かって落ち続けます。
左図:時空の歪みを上下左右の4平面で表現している。シュヴァルツシルト半径によりブラックホールの大きさが決まる。右図:ブラックホールの周囲での光の挙動。事象の地平面より内側を通過しようとする光はブラックホールに捉えられ脱出不可能となる。
空間が歪んで、それに沿って光も曲がるなんてちょっと想像できませんよね(;・∀・)。
ちなみに地球がブラックホールになったと仮定すると、その質量(5.9724×1024kg)から算出されるシュヴァルツシルト半径は、なんと約1センチ!
うわわ~、地球が直径約2センチのビー玉サイズに(◎_◎;)!
やっぱりとんでもない天体ですね、ブラックホール…(;´Д`)!
ブラックホールの見た目
ブラックホールにおいて事象の表面より内側は光も逃れられない超絶重力空間のため、他の天体のように物質表面を直接観測することはできません。
ただし、他の天体との相互作用を考慮して間接的に観測したり、ブラックホール周辺がどのような見えるかシミュレーションすることはできます。
もしブラックホールを見ることができたなら下の想像図のような、景色を見ることができるでしょう。
事象の地表面より内側は真っ黒で、宇宙にぽっかりと空いた穴のようです。
さらに、”穴”の周囲は光が捻じ曲げられ背景の星々が歪んで見えます。
なんともまあ不気味な姿をしていらっしゃる…(*_*;
天の川を背景とした場合のブラックホールの外観シミュレーション画像質量は太陽の10倍でブラックホールから600 km地点という設定
ブラックホールに吸い込まれたら?
もしも、我々人間がブラックホールに飲み込まれるとどうなってしまうのでしょうか?
飲み込まれるなんて怖いですが、「一体自分はどうなってしまうんだ!」ちょっと気になりますよね。
それでは、ちょっくらブラックホールに飛び込んでみましょうかね(*’▽’)
分子レベルでバラバラに…
まず、前提としてブラックホールに飛び込むのは足の方からということにしましょう。
事象の地平線に近づいていくにつれて、足先と頭部にかかる重力差が大きくなっていき体の側面にも圧力が加わってきます。
そして、下半身がぐにょーんと伸びてゆき、足先から体が千切れてゆき、細胞も崩壊し、最終的に分子レベルでバラバラになってしまいます。
この現象を、スパゲッティ化現象またはヌードル効果といいます。
…(;’∀’)
麺類になっちゃってるじゃないですかー( ;∀;)
事象の地平面に到達するまでどんな景色が見えるか再現した動画も紹介しておきますね(;・∀・)
※ただし、怖いので注意(;^ω^)
死の間際に見る景色は?
実はブラックホールに近づくと時間の進み方が変わってきます。
時空の歪みにより、特異点に近いほど場所ほど時間の進みが遅くなります。
吸い込まれる Aさん を Bさん が遠くから見ていたとしましょう。
Bさんから見るとAさんがブラックホールに近づくにつれて落下速度はどんどん落ちてゆき、事象の地平面に到達する頃には停止しているように見えるはずです。
Aさんはピクリとも動きませんし、もちろん老いもしません。
これぞ究極のアンチエイジングなのではないでしょうか⁉
逆にAさんから見るとBさんはみるみる年老いてゆき、次の瞬間には宇宙では永遠にも等しい時間が流れます。
最終的にはAさんは自分の体が足元からバラバラになっていくのを目撃することでしょう。
ワームホール
ブラックホールに人間が生身で突撃したら死んじゃうのはわかりました。
じゃあ、仮に絶対無敵状態の宇宙船に乗ってブラックホールの内部を目指すとしましょう。
ブラックホールは、特異点付近に「ワームホール」がある可能性があります。
「ワームホール」とは、どこか遠くの別の時空へと繋がったトンネルのような抜け道だと考えられています。
無事に宇宙船がブラックホールの中心部にたどり着きワームホールをくぐると、「ホワイトホール」と呼ばれるブラックホールと対を成す時空の出口から宇宙船が飛び出します。
飛び出した先はワームホールをくぐった地点からはるか遠くの場所で、光速以上の速度で移動したことになります。
なんとワームホールを利用すれば、理論上はワープ航法やタイムトラベルも可能になります!
ワームホールってすごい(*’▽’)‼
ただ、ワームホールを実用化するには理論の謎や技術的障害がたくさんあって、現状はこれからの研究に期待するしかない状態です。
何とか私が生きている内に実用化お願いします(=゚ω゚)ノ‼
ワームホールの概念図。どこかの時空と繋がっておりワープ航法の出入口になる可能性がある。
銀河の中心
銀河とは、恒星や惑星等とにかくたくさんの天体の集まりのことで、無数の星たちが銀河の中心を軸に公転しています。
この銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在していると考えられています。
我々の暮らす太陽系が属している天の川銀河の中心にもブラックホールが存在し、その質量は実に太陽の410万倍にもなります(◎_◎;)!
さらに、NGC 4889楕円銀河の中心には太陽の210億倍の重さで、シュバルツシルト半径が約700億kmにもなる常識外れの意味不明ブラックホールがあるそうです。
太陽系の海王星の公転軌道半径が45億kmですからね。
ブラックホールの中には太陽系よりも大きなものが存在するということです。
はあ…、途方もなさ過ぎて呆れますわ(;^ω^)
まあ、でもこういう人間の理解の及ばないスケールを持つ宇宙だからこそ面白いしロマンを感じるんですよね(*’▽’)。
ブラックホールの一生
ここまででブラックホールがとんでもない天体であることは、わかっていただけたと思います。
じゃあ、次はブラックホールがどのように生まれ、そして死を迎えるのか。
ブラックホールの一生を紹介していきます。
ブラックホールの誕生
ブラックホールは太陽の30倍以上の質量を持つ恒星をもとにして誕生します。
恒星は原子の核融合反応によって熱や光を放っていますが、やがて星の中心部の核融合反応が停止し急速な収縮を開始します。
星が自らの重力に耐え切れず重力崩壊を起こすのです。
こうして星の中心の一点に恒星全体の質量が集中し、重力の特異点を形成することでブラックホールが誕生するのです。
下の動画も参考にしていただけると理解しやすいと思います。
食事
誕生したブラックホールは近くにある天体を手当たり次第に食い荒らします。
吸い込んだ星の質量分ブラックホールは重くなっていき、どんどん成長していきます。
まさに、宇宙のモンスター(◎_◎;)!
ブラックホールの食事の様子をNASAがシミュレーションし映像化しています。
下に動画を貼っておきますので見てみて下さいね(‘ω’)ノ。
蒸発
これまでブラックホールは周囲の天体を飲み込んで無限に成長していくだけだと思われてきていましたが、1974年にスティーヴン・ホーキングが「ブラックホールからは物質が逃げ出し、最終的に蒸発して消滅する可能性がある」という内容の発表を行いました。
ホーキング曰く、量子力学によると時空間では粒子と反粒子が絶えず対生成・対消滅を繰り返しており、事象の地平面近傍で粒子と反粒子が対生成した場合、対消滅が起こる前に反粒子だけが特異点へと落ちていき残った粒子がブラックホールから解放されることがあるそうです。
特異点へと落ちていった反粒子は負のエネルギーを持っているためブラックホールのエネルギーが減衰します。
この現象を観測すると、ブラックホールから粒子が飛び出す際に熱放射により光っているように見えるはずです。
この現象をホーキング輻射(放射)と呼びます。
ホーキング輻射が続くとブラックホールのエネルギー(=質量)は失われていき、やがて蒸発してしまいます。
つまりはブラックホールは死を迎えるのです。
まとめ
さてさて、今回は宇宙最大の謎のひとつであるブラックホールについて紹介してきましたがいかがでしたか?
実はブラックホールに関連する記事のネタはまだまだあって、今後も関連記事をたくさん書いていくつもりです。
ブラックホールネタであといくつ記事書けるかな~(*’ω’*)?
いずれにせよ今後もできるだけ情報がいっぱい詰まった濃い記事を書いていきたいですね(*´▽`*)
ではでは、次回の宇宙情報を乞うご期待!