2009年、米国宇宙局NASAが驚きの太陽探査プロジェクトを発表しました。
なんと、「これ突っ込んじゃうんじゃないの⁉」というスレスレの距離まで探査機を太陽まで接近させるというのです。
その探査機の名は「パーカー・ソーラー・プローブ」‼
そして、2018年8月12日、満を持してこの探査機が打ち上げられました!
太陽の爆発的エネルギーの凄まじさは周知の事実。
「太陽やばすぎて近付けない…」と、数多くの謎を解明できないままにしていた人類。。。
そんな、現状を打破すべく太陽に挑戦状を叩きつけたNASAですが、一体どれほどの勝算はあるのでしょうか⁉
ということで今回は、世界初の太陽探査プロジェクトの主人公「パーカー・ソーラー・プローブ」について紹介していきたいと思います。
関連記事
探査機パーカー・ソーラー・プローブとは
太陽の爆発的エネルギーは凄まじく、太陽と地球ほどの距離があっても太陽風や磁気嵐の影響で地上の電子機器や人工衛星、地球外探査機が不調をきたし、最悪の場合、壊れてしまうこともあります。
日本の小惑星探査機「はやぶさ」も、探査対象である小惑星イトカワに向かう過程で太陽からの影響により、機体の一部が破損するという被害を受けています。
遠く離れていてもこれほどの影響を受けてしまうが故に、これまで太陽に関する探査が実施された例はありませんでした。
そんな現状を打破すべく、NASAとジョンズ・ホプキンス大学が共同で「パーカー・ソーラー・プローブ」を開発し、世界初の太陽探査を計画しました。
ちなみに名前の由来は、太陽研究の権威ユージン・ニューマン・パーカーにちなんでとのことです。
2018年8月12日 3:31 (EDT)、ケープカナベラル空軍基地 SLC-37 よりデルタⅣヘビー10号機で「パーカー・ソーラー・プローブ」は宇宙へと打ち上げられました。
ミッションの目的、探査機の特徴、今後の計画について見ていきましょう。
関連記事
目的
パーカー・ソーラー・プローブの任務目的は、これまで解明困難とされてきた「太陽の謎」を丸裸にすることです。
遠くから見てもわかんないから近づいて見ちゃおう!ってことです。
簡単ですね(*’▽’)‼
でも「太陽の謎」といっても、いったいどのようなものがあるのしょうか?
「太陽に関する長年の謎が解明!」というニュースが流れる前に、謎の内容について知っておきましょう。
太陽風が加速する謎の解明
太陽風とは、太陽から吹き出してくる超高温のプラズマのことです。
太陽風は、太陽表面付近では秒速 30 ~ 60 km なのに対し、太陽半径の5倍程度の距離から急激に加速し秒速 400 kmに達するようになります。
プラズマの様子を地上から観察するのは困難なため、太陽風が加速する理由は未だに解明されていません。
そこで、パーカー・ソーラー・プローブを用いて太陽に接近し、間近で太陽風の元となる磁場の構造と変異や太陽周辺の多粒子プラズマを観測することで、太陽風の加速のメカニズムを探ります。
コロナ加熱問題の解決
太陽の表面温度は約6000℃であるのに対し、表面から数千km上空に位置するコロナの層は200万℃もの超高温に達します。
なぜ、エネルギー源である恒星本体付近より離れた場所の方が高温になるのか理由はわかっていません。
この謎の現象は「コロナ加熱問題」と呼ばれており、パーカー・ソーラー・プローブの太陽探査で解明されることが期待されています。
エネルギー性粒子の加速と運搬のメカニズム解明
太陽では、太陽フレアという太陽表層で発生する大爆発により、超高エネルギー粒子が発生します。
太陽風と同様に、このエネルギー性粒子も太陽付近から離れた位置で加速されることがわかっています。
しかし、エネルギー性粒子がなぜ加速するのかはわかっていません。
エネルギー性粒子の加速メカニズムが解明されれば、高速粒子の影響による探査機の不調や宇宙飛行士への害を防ぐ手がかりになるかもしれないのです。
パーカー・ソーラー・プローブには、是非ともこの謎を解明してほしいですね。
機体の特徴
画像:NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman
パーカー・ソーラー・プローブの寸法は、画像の底部が 1.0 m、高さが 3.0 m、上部ヒートシールドが 2.3 m となっており、質量は 685 kg です。
磁気探知機、エネルギー粒子測定器、太陽風計、広視野望遠鏡などの各種センサーを搭載しており、打ち上げ後に正常作動することが確認されています。
下の画像は、パーカー・ソーラー・プローブの広視野望遠鏡にてテスト撮影を行い地球にデータ送信してきた画像です。
左の画像には天の川、右の画像中央からやや左上には明るく映る木星が見えますね。
視界良好のようで何よりです(*’▽’)
画像:NASA/Naval Research Laboratory/Parker Solar Probe
熱保護対策
太陽探査の肝は「どのように太陽の熱から探査機を保護するか」、これに尽きます。
何の対策も無しに太陽に近づけば、探査機が超高温にさらされあっという間に溶けて無くなってしまいます。
仮に探査機が原型を留めたとしてもデリケートなセンサー類を探査終了まで保護する必要があります。
そこでNASAは、パーカー・ソーラー・プローブに直径 2.3 m のヒート(耐熱)シールドを搭載しました。
このヒートシールドは、耐熱性・化学安定性に優れる炭素繊維強化炭素複合材料でできており、約1400℃まで耐えることができます。
さらに、高性能の自律制御機能により常に探査機本体がシールドの陰になるよう自動で姿勢制御が行われます。
また、機体内部には水循環により機体を冷却する水冷機能が備わっており、探査機を適切な温度で運用できるように設計されています。
探査計画
パーカー・ソーラー・プローブは、地球から打ち上げられるとまず金星に向かいます。
金星を利用したスイングバイ航法による加速と太陽への接近を24回にわたり繰り返すことで、最終的に探査機の速度は秒速 200 km に達し、太陽まで590万 km の距離までせまる予定です。
2018年11月初旬ごろに一回目の太陽接近が予定されています。
早くも成果の報告が楽しみです(*’▽’)
パーカー・ソーラー・プローブの計画軌道(上) 太陽への接近予定距離と計画経過日数(下)
探査計画の概要に関する動画動画内では英語が使われていますが、英語がわからなくても内容はなんとなくわかる構成になっています。
パーカー・ソーラー・プローブの軌跡
画像:NASA / Johns Hopkins APL
パーカー・ソーラー・プローブによる、太陽の探査計画は2018年9月現在進行中です。
当ブログでは、この太陽探査計画をリアルタイムで追っていく予定です。
2018年8月12日 打ち上げ
画像: NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman
2018年8月12日 3:31 (EDT)、ケープカナベラル空軍基地 SLC-37 よりデルタⅣヘビー10号機でパーカー・ソーラー・プローブが宇宙へと打ち上げられました!
打ち上げ成功おめでとうございます!
この探査機の名前の由来となったパーカー教授ももちろん打ち上げに立ち会っていました。
目がキラキラしていてうれしそうですねえ(*´▽`*)
でも、計画は始まったばかり。
続報にも期待しておきましょう。
画像:NASA/Glenn Benson
2018年9月13日 水冷ソーラーアレイ冷却システム完全起動
画像:NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman
9月13日、パーカー・ソーラー・プローブに搭載された水冷式機体冷却システムが初の完全起動を果たしました。
写真右下の太陽光発電パネルの熱を水で吸収し、左上部分のラジエーターにより宇宙空間に発散します。
これで、熱保護システムのひとつが正常に動作したことになります。
今のところ計画は順調のようです(*´▽`*)
11月初旬ごろに予定されている初の太陽接近を心待ちにしておきましょう!
※これからも新しい情報が得られ次第、どんどん更新していく予定ですのでお楽しみに。