水星探査計画ベピ・コロンボとは?その目的や探査機「みお」にせまる

水星探査計画ベピ・コロンボとは?その目的や探査機「みお」にせまる


画像:JAXA



欧州宇宙機関(ESA)とJAXAの国際協力ミッションである水星探査計画ベピ・コロンボ(BepiColombo)の始動が間近に迫っています。

ベピ・コロンボでは、2機の探査機を用いて水星の探査を行います。

2機の探査機の内の1機はESAが製作を担当した水星表面探査機で、もう1機はJAXAが担当した水星磁気探査機「みお」です。

 

水星は水星探査の難易度の高さ故にまだまだ謎が多い星です。

そんな謎多き惑星である水星に満を持して探査機を送り込む水星探査計画ベピ・コロンボですが、具体的な目的や探査機の詳細、今後の探査計画について詳しくは知らないという方が多いのではないのでしょうか。

そこで今回は水星探査計画ベピ・コロンボについて紹介していこうと思います。

 

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水星探査計画ベピ・コロンボとは


画像:JAXA

水星探査計画ベピ・コロンボ(BepiColombo)とは、JAXAと欧州宇宙機関(ESA)がそれぞれ製作した探査機を持ち寄り合同で水星の探査を行う日欧協力の大型ミッションです。

このミッション名ですが、イタリアの天体力学者ジウゼッペ・コロンボ博士の愛称であった「BepiColombo」にちなんでのものだそうです。

コロンボ博士は水星探査のために金星を利用したスイングバイ航法を考案した人物です。

 

太陽系惑星の中で水星は一番内側の公転軌道を持つ惑星で、太陽との距離が近いが故に「灼熱の過酷な環境」「太陽の強い重力」が水星に探査機を送りこむ上での大きな障害となり、これまで水星探査は思うように進んでおらず水星に関する多くの謎が未解明のままです。

ちなみにこれまで人類が水星に送り込んだ探査機は「Mariner10」と「MESSENGER」の2機のみです。

他の太陽系惑星の探査機の数はというと、金星は27機、火星は24機、木星10機、土星4機、天王星と海王星は1機ずつ(両方ボイジャー2号)となっています。(失敗例・衛星メインの探査機は除外しています。)

いかに水星探査のハードルが高かったか想像するのに参考にして頂けたらと思います。

 

それでは、ベピ・コロンボの目的や解明するべき謎と過酷な水星探査を完遂すべく開発された探査機について詳しく見ていきましょう。

 

目的


画像:ESA

水星探査ベピ・コロンボの目的は2つの周回探査機を用いて、水星の磁場・磁気圏・内部・表面を解析し長年解明されていなかった水星の謎を解明することです。

日本とヨーロッパが共同で大型地球外探査プロジェクトを実施するのは今回が初なので、JAXAとESAのコンビネーションにも要注目です。

固有磁場の解明


画像:ESA

水星は微弱ながら磁場を持っている惑星です。

通常、惑星に磁場が生じる場合、磁気を発する天体の内部には高温の鉄などの液体金属の層が存在し絶えず対流しているはずです。

しかし、水星の内部は冷えており鉄のコアは固化しているため液体金属の対流など起こるはずがないにも関わらず磁場が存在しているという矛盾があります。

この謎を解くためにベピ・コロンボでは、水星周辺の磁場を高い精度で計測し、惑星地場の成因を探る予定です。

 

地球と異なる特異な磁気圏の解明

水星は広い宇宙の中でも最小スケールの磁気圏を持つ惑星として知られています。

太陽系の地球型(岩石)惑星の中で固有磁気圏を持つのは地球と水星の2つだけです。

ベピ・コロンボで水星磁気圏の構造や運動を観測が成功すれば、水星の独自性の解明につながります。

そしてなにより、地球と水星の比較ができるようになり「惑星の磁場・磁気圏」の研究が飛躍的に進むことになります。

 

水星表面から出る希薄な大気の解明


画像:JAXA

水星にまつわる謎のひとつとして、近年発見されたNa(ナトリウム)を主成分とした希薄な「外圏大気」の存在があります。

この大気は太陽光・太陽風・磁気圏イオン・ダストなどの衝突の影響により地表からたたき出され、水星半径の数倍まで大気圏が広がります。

ただし、この大気の構造や詳細な組成、どのようにして発生し消えていくかなど、わかっていないことが多くベピ・コロンボでの探査で大気圏の構造や変動を観測することでこの謎の解明に挑みます。

 

太陽近傍の惑星空間を観測

太陽に近づくためには、「太陽光や太陽風に負けない耐久力」と「太陽の強い重力に引き込まれないだけの速度」が必要になります。

ベピ・コロンボでは探査機に耐熱対策を施し耐久力の問題を克服し、地球と金星と水星自身を利用した惑星スイングバイ航法により太陽近傍を周回するだけの速度を得ます。

これにより未だかつて観測したことのない太陽近傍の惑星空間や太陽から発せられる強い衝撃波を観測し、そのエネルギー過程を解明します。

太陽探査機としては2018年8月に打ち上げられたNASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブが最近話題になっていますが、ベピ・コロンボでも太陽に近づく貴重なチャンスが何度もあります。

パーカー・ソーラー・プローブベピ・コロンボ、どちらのプロジェクトでも太陽の謎の解明の手掛かりが見つかるといいですね(*’▽’)

 

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水星探査に挑む探査機

水星探査計画ベピ・コロンボでは、JAXAと欧州宇宙機関(ESA)が一機ずつ探査機の制作を担当し、共同でミッションに挑みます。

それぞれの探査機は、電気推進モジュール (SEPM=Solar Electric Propulsion Module : ESA製作) 化学推進モジュール (CPM=Chemical Propulsion Module : ESA政策) と連結させて「アリアン5型」ロケットにて打ち上げられます。

水星への旅路でメインエンジンを担うのはSEPMの方になります。

SEPMとは「低推進力」「超高燃費」という特徴を持つ電気推進を採用しており、惑星間の長旅にはもってこいです。

小惑星イトカワの探査を完遂した日本の小惑星探査機はやぶさも電気推進を採用しており、その有用性は証明済みです。

一方CPMは「高推進力」「低燃費」という特徴を持つ化学推進を採用していて、探査機が周回軌道に入る際のブレーキや緊急の姿勢制御を行う際に使われます。

 

ベピ・コロンボの計画初期では、日欧の両探査機は連結した状態で共に水星を目指すわけです。

とりあえずは打ち上げと水星への航行が無事に成功することを祈りましょう(*’▽’)

 

技術的な課題

水星の探査を行うにあたって、克服しなければならない大きな課題が2つあります。

① 水星は公転軌道が地球とは大きく異なり質量も小さいため、探査機を周回探査軌道に乗せるためには高い推進力が必要になる。

② 強い太陽光及び水星からの熱放射に耐えうる探査機の熱対策が必要になる。

 

これらの問題に関しては、もちろんJAXAもESAも対策をとっています。

①の問題に関しては電気推進と惑星スイングバイ航法の併用により、水星周回探査に必要な速度を得ます。

②に関しては探査機の側面を鏡張りにするなどして太陽光の反射率を高め熱吸収を最小限に抑える工夫が施されています。

 

次に、JAXA・ESA がそれぞれが製作した探査機について見ていきましょう。

 

水星磁気圏探査機「みお」(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)


画像:JAXA

JAXAが製作を担当した、水星磁気圏探査衛星「みお」(MMO)は質量約 285 kg のスピン安定衛星で、水星の固有磁場、大気、表面の地形の観測を目的としています。

スピン安定衛星とは、航行中に一軸回転することにより生じるジャイロ効果を利用して姿勢制御を行う探査機のことです。

機体の側面は太陽光対策のため鏡面加工が施されています。

ただし、この鏡面加工による耐熱対策はMMOが独立探査を開始した後のスピン航行を前提にしているため、水星に到着するまでの間はMMOサンシールド(MOSIF)によって太陽光から機体を保護します。

 

日本初の水星探査機ですので、嫌でも期待が集まります。

がんばれ!みお(*’▽’)!


画像:JAXA 「みお」とMOSIFの結合作業


画像:JAXA

水星表面探査機MPO(Mercury Planetary Orbiter)


画像:ESA

ESAが製作を担当した、水星表面探査機MPOは質量約 357 kg の三軸安定衛星で、水星の表面地形、鉱物・化学組成、重力場の精密測定を目的としています。

三軸安定衛星とは、三方向の直行する軸を安定させることで姿勢制御を行う探査機です。

つまりMPOは「みお」とは違い、機体を回転させなくても姿勢制御ができる探査機ということです。

みおと一緒にがんばれ!MPO(*´▽`*)!


画像:ESA


画像:ESA / CNES / Arianespace / Optique video du CSG – J. Odang  MPO(下)とMMO(上)の打ち上げ準備風景

 

今後の計画

打ち上げ予定日時:2018年10月19日(金) 22時45分28秒 (フランス領ギアナ現地時間)
(日本時間:2018年10月20日(土)10時45分28秒)

打ち上げ場所:クールー宇宙基地

 

地球1回、金星2回、水星6回のスイングバイを経て、2015年末に水星到着予定。

 

MMO(みお)は、水星の高度 400 km × 1500 km, 軌道傾斜角90℃の極軌道を航行予定。

MPOは、水星の高度 400 km × 12000 km, 軌道傾斜角90℃の極軌道を航行予定。

 


画像:JAXA

 

水星探査計画ベピ・コロンボの軌跡

将来歴史に残るであろう、水星探査計画ベピ・コロンボの軌跡をリアルタイムで追っていきましょう。

2018年10月20日 打ち上げ成功!

予定通り、2018年10月19日(金) 22時45分28秒 (現地時間) (10月20日(土) 10時45分28秒(日本時間))にフランス領ギアナのギアナ宇宙センターから水星磁気探査機「みお」(MMO)水星表面探査機(MPO)を乗せたアリアン5型ロケットが打ち上げられ見事成功しました!

 

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※今後、イベントやスケジュールに関する新情報が入り次第、どんどん更新していきます(*’▽’)。

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