太陽系を旅するほうき星『彗星』とは?「何もの?」「どこから?」その正体にせまる

太陽系を旅するほうき星『彗星』とは?「何もの?」「どこから?」その正体にせまる





皆さん、『彗星(すいせい)』をご存知でしょうか?

聞いたことも無い、という方はほとんどいないと思います。

夜空でひときわ目立つ”輝く尾”を引く姿をイメージしますよね。

その姿から、日本では”ほうき星”なんて呼ばれたりもします。

でも、『彗星』の本当の姿や、尾を引く仕組み、そもそもどこから来たのか、などについては知らないという方が大半ではないでしょうか。

 

そこで、今回は『彗星(すいせい)』についてご紹介していこうと思います。

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彗星とは

彗星(すいせい)とは、太陽系にある恒星や惑星を除いた「小天体(しょうてんたい)」のうち、氷や塵などでできた天体のことを指します。

主成分が氷と塵であることから「汚れた雪だるま」なんて例えられることもあるんですよ(;^ω^)。

彗星の本体であるは、数キロメートルから数十キロメートルほどのサイズで、見た目は一般的な岩石小惑星のイメージとあまり変わりません。

実は毎年、数百個の小さな彗星が太陽系の内側を通過していますが、あまり目立たないため世間では話題にはなっていません。

宇宙の天体に興味のない人でも気づくほどの、大きくて明るい大彗星は約10年に1回現れるかどうかといったところです。


テンペル第一彗星の核

 

特徴的で美しい外見を持つ彗星ですが、かつては不吉の前兆と捉えられることが多かったようです。

1910年のハレー彗星の出現の際には「彗星の尾によって人類が滅ぶ」などという風説が広まり、日本では「地球の大気が一瞬なくなる」という噂に振り回された民衆によって自転車のタイヤチューブが買い占められるといった珍事が起きたりもしました。

今振り返るとちょっと馬鹿らしい話ですが、得体の知れないものを目の前にした人間の反応としては自然なのかもしれません。

それでは次は、「尾」「出身」など彗星に関してもう少し突っ込んだお話しをしていきます。

皆さんも、次に大彗星が来た時にパニックに陥らないよう「彗星」についてもう少し詳しくなっておきましょう(*’▽’)!

 

彗星の尾の秘密


提供:国立天文台

彗星は、楕円の公転軌道を持っており、太陽に接近した際に自身の一部である氷や塵を宇宙空間に放出し、一時的な大気であるコマや、彗星最大の特徴と言える尾(テイル)を発生させます。

太陽光によって彗星の本体であるが熱せられて、氷が蒸発するのですが、固体であった氷が気体である水蒸気に変化するときの圧力はもの凄くて、塵も巻き込んで宇宙空間に飛び出していくのです。

このが、太陽光を反射して輝く姿こそが、彗星が日本で「ほうき星」とも呼ばれる所以(ゆえん)となっています。

提供:国立天文台

 

また、彗星の尾は2本に分かれており、ガスがイオン(またはプラズマ)化して作られる「イオンの尾」と、塵(ダスト)が作る「塵(ダスト)の尾」があります。

イオンの尾は、太陽からまっすぐに放たれる太陽風の影響を受けるため、太陽の反対方向にまっすぐと伸びます。

逆に塵(ダスト)の尾は、太陽風の影響をイオンほど受けず、彗星から放たれた後は慣性の法則に従い、幅広く少し曲がった形を描きます。

この時放たれた塵(ダスト)の尾は、彗星と同様の軌道を周回し、流星群のもとである塵の帯(ダストトレイル)となります。

尾を引く姿が流れ星を連想させるため、実際に彗星を見たことの無い方の中には、「彗星は尾とは逆方向に猛スピードで進んでいる」と思っている人も多いかもしれませんが実はそうではないんですね。

見た目の速さも、他の星の日周運動とほとんど変わりません。

 


1997年に撮影されたヘール・ボップ彗星
きれいにイオンの尾と塵の尾に分かれているのがわかる

 

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どこから来るの?

大きな楕円軌道を持つ彗星ですが、一体どこで誕生して、どこからやってくるのでしょうか?

現在は、多くの彗星が「エッジワース・カイパーベルト」または「オールトの雲」で生まれ、太陽のある方向へやってきているという説が有力となっています。

 

エッジワース・カイパーベルト


提供:国立天文台

エッジワース・カイパーベルトとは、海王星の公転軌道よりも外側に円盤状に広がる氷と塵が分布する領域のことです。

この領域に広がる氷と塵は、太陽系初期の段階で惑星や小惑星になり切れずに残ったものだと考えられています。

公転周期が200年以内の「短周期彗星」は、エッジワース・カイパーベルトで誕生し、やがて太陽に引き寄せられ彗星となると考えられています。

エッジワース・カイパーベルトでは惑星の公転軌道面の延長上付近に氷と塵が分布しているため、惑星と短周期彗星の公転軌道面の向きはほぼ同様になります。

短周期彗星の多くは、すでに何十回、何百回と太陽に接近しているため、放出する成分が少なくなっており、大彗星と呼ばれるほど大きく明るいものはほとんどありません。

 

代表的な短周期彗星としては、ハレー彗星(公転周期77.6年)や、エンケ彗星(公転周期3.3年)が挙げられます。


1986年に撮影されたハレー彗星(左)と1994年に撮影されたエンケ彗星(右)

 

オールトの雲


提供:国立天文台

オールトの雲とは、太陽から1万~10万天文単位(1.58光年)ほどの範囲を球殻上に取りまく氷や塵などで構成されていると考えられている仮想的な天体群のことです。

公転周期が200年以上の「長周期彗星」や、一度太陽に接近したっきり戻ってこなくなる「非周期彗星」は、オールトの雲からやってきていると考えられています。

 

代表的な長周期彗星としては、ヘール・ボップ彗星(公転周期2,534年)や百武(ひゃくたけ)彗星(公転周期113,782年)が、非周期彗星としては、コホーテク彗星やアイソン彗星が挙げられます。

 
1997年に撮影されたヘール・ボップ彗星(左)と1996年に撮影された百武彗星(右)

 
1974年に撮影されたコホーテク彗星(右)と2013年に撮影されたアイソン彗星(左)

 

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地球への衝突の可能性

彗星は、太陽に接近する過程で惑星の重力に捉えられ衝突する可能性を秘めています。

近年では1994年に、ハッブル宇宙望遠鏡によりシューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突する様子が克明に捉えられました。


木星の南半球に残るシューメーカー・レヴィ第9彗星の衝突痕

 

40億年前には、地球にも多数の彗星が衝突し、大量の水をもたらしたと考えられています。

生命の素となる物質、または生命そのものを運んできたという説すらあります。

そして、今後も地球に彗星が衝突する可能性はゼロではありません。

一般的に、衝突すると地球が滅ぶ隕石のサイズは1km以上と言われています。

近年は小惑星の軌道予想も高精度になってきていて、地球の生物が滅んでしまう程の規模の彗星が接近すれば何年も前に衝突予想ができます。

しかし、もし彗星の衝突が予測できたとしても、今のところ衝突を回避する手段が無いのです。

映画ディープ・インパクト のように、核兵器で彗星を破壊するというのは非現実的 (宇宙空間では大気が無いため爆風の衝撃が発生しない) ですし、今のところ地球に衝突しないよう神に祈るしかありません。

地球が滅ばないにしても、100メートル以下の小さな彗星の発見は困難で、確率は極めて低いですがある日突然我が家に彗星が降ってくるなんてことが無きにしもあらずなんです。

まあ、これに関しては彗星だけに限った話ではなく太陽系に属する小惑星などの小天体全てに言えることなのですが(;^ω^)。

 

とりあえず、彗星が地球に衝突する可能性はゼロではないですし、それを防ぐ手段もありません!ということです(◎_◎;)。

もしもの時は潔くあきらめましょう(;・∀・)!

 

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まとめ

さてさて、今回は『彗星』に関して紹介して参りましたがいかがでしたか?

今後、大彗星と呼べるほど明るく大きな彗星の接近の予定は、残念ながらありません。

しかしながら、まだ発見されていないだけで写真で見るような美しい彗星を生きている内に見られる可能性が無いわけではありません。

いつ新しい彗星が発見されるかは、だれにもわかりませんが密かに期待しておきましょう(*’▽’)。

 

ではでは、次回の宇宙情報も乞うご期待!

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